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大阪地方裁判所 昭和54年(モ)2956号 決定 1979年9月21日

申立人

扶桑工業株式会社

右代表者

立半治

申立人

淀川産業株式会社

右代表者

渡岡良三

右両名代理人

伊藤公

新宅隆志

相手方

更生会社エアロマスター株式会社管財人

主文

相手方は、監査法人栄光会計事務所作成の「調査総括調書」の写を当裁判所に提出せよ。

理由

一申立人らの申立は、別紙記載のとおりである。

二当裁判所の判断

1  相手方の審尋結果によれば、相手方が主文掲記の文書(以下本件文書という)を所持していることが認められる。

2  申立人らは、本件文書が民事訴訟法三一二条三号にあたる文書であるとして、その原本または写の提出を求めているので、まず、本件文書が同条項にいう文書に該当するか否か検討する。

(一)  一件記録によれば、本件損害賠償請求事件は、「申立人(原告)らは、訴外更生会社エアロマスター株式会社(以下更生会社という)の共益債権者ないしは確定一般更生債権者であつて、更生会社の再倒産によつて予想された配当さえ殆ど受け得なくなり、損害を被つたものであるが、これは、被告国を除くその余の被告らが、更生会社の管財人ないし管財人代理として、善管義務に違背し、決算等につき紛飾をなし、背任的行為をなして更生会社の財産を犠牲にして自己または第三者のために利益を図る行為をなしたため、また被告国が元管財人ないし管財人代理の選任、許可、監督につき過失があつたためであり、申立人らはその損害の賠償を求める」というのであり、他方、申立人らが本件において提出を求めている本件文書が作成されるに至つた経緯及びその内容などを考察すると、「更生会社の監督の任を負う更生裁判所において、更生会社の営業継続中の経理内容について生じた疑問を解明するため、監査法人栄光会計事務所に対し昭和五一年一二月三一日現在の財産状態の監査を命じたこと、同事務所はこの命令に基づき約一年間に亘り更生会社の帳簿等を調査し、その結果を網羅的に文書にまとめ、これを同事務所で保管していること、これが「調査総括調書」と呼ばれるものであつて、それには更生会社の経営に関し、すくなくとも被告白井為雄、同古賀善保及び同望月幸彦が管財人ないし管財人代理としての地位に基づき関与した事柄で、損害賠償請求や刑事の各事件に発展する可能性を秘めた数多くの問題点を具体的に指摘し、これにつき意見を付していること、もつとも同事務所は、更生裁判所に対しては、右の点につき抽象的に損害賠償請求や刑事の各事件に発展する可能性を秘める問題があると指摘するにとどめる比較的簡単な監査報告書を提出しただけであつたこと、更生会社の現管財人である相手方は、今後の管財事務の参考及び方針決定の資料とするため、同事務所から前記「調査総括調書」の写を貰い受けたこと、これが本件提出命令の対象にされている文書であるところ、相手方は、これを証拠資料として、更生会社の管財人ないし管財人代理の地位にあつた被告白井為雄、同古賀善保及び同望月幸彦らの背任、業務上横領及び詐欺の各罪に該当する事実を具体的に列挙し、同被告らを大阪地方検察庁に告訴したこと」、以上の事実を認めることができる。

(二) とこるで、民事訴訟法三一二条三号前段にいう「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレ」た文書の趣旨を、挙証者の地位や権利等を明らかにすることを意図して作成されたものに限定すべきいわれはなく、当該文書の性質及び記載内容から客観的に考察して、挙証者の地位や権利等を明らかにすることないしはそれらを基礎づけることを予想していると解される文書もまた「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレ」た文書というに妨げないというべきである。

(三) そこでこれを本件についてみるに、本件文書は、前記認定のとおり、更生会社の営業継続中の経理内容につき調査した結果及び元管財人ないし管財人代理であつた者らの違法行為を具体的に指摘したものであり、すくなくとも被告白井為雄、同古賀善保及び同望月幸彦に対する申立人らの本訴請求を基礎づけうる資料であるところ、申立人らは、本件文書に指摘の違法行為により損害を被るべき当該会社更生手続の共益債権者ないしは確定一般更生債権者であるから、本件文書は、客観的に申立人らの利益保護ひいては損害賠償請求権の有無を基礎づけることを予想しているものと解することができる。

してみれば、本件文書は、民事訴訟法三一二条三号前段の文書に該当するということができる。

3  よつて、本件文書提出命令の申立は理由があるのでこれを認容することとし、主文のとおり決定する。

(石田眞 島田清次郎 塚本伊平)

〔文書提出命令申立書〕

一、文書の表示

監査法人栄光会計事務所作成の「調査総括調書」なる文書の原本又は写

二、文書の趣旨

大阪地方裁判所民事六部が昭和四九年(ミ)第六号会社更生手続事件につき、監査法人栄光会計事務所に調査を依頼した結果作成された昭和五二年一一月三〇日付同監査法人の監査報告書を補充する調査書

三、文書の所持者

更生会社エアロマスター株式会社管財人弁護士吉田訓康

四、立証趣旨

(一) 元管財人白井為雄及び元管財人代理人古賀善保、同山本竹男、同向井昇、同望月幸彦らは、本件会社更生手続において、右更生会社に対し、横領、背任等の不法行為をなし、もつて原告に損害を蒙らせた事実。

(二) 国の機関たる更生手続裁判所は、十分なる監督をなさなかつた過失により、右元管財人らの不法行為を継続させた事実。

(三) 右元管財人らの不法行為は組織的かつ継続的な行為であり、更生手続裁判所が十分なる監督をなせば、少なくとも初期に発見し、損害の増大を予防できた事実。

五、文書提出義務の原因

民事訴訟法三一二条三号

(一) 右文書は、更生手続裁判所が、更生手続を公正かつ適法に行ない、もつて更生債権者、共益債権者等の正当なる権利を確保するため作成させたものである。

よつて右文書は、民事訴訟法第三一二条第三号前段所定の「挙証者の利益の為」作成された文書に該当する。

(二) 右文書は、元管財人等の不法行為の事実を指摘したものでありかつ更生手続裁判所の監督についての過失を推認させるものであるから、原告らの更生債権者及び共益債権者としての損害賠償請求権の存在を立証するものである。

よつて「法律関係そのものを記載した文書」であるか又は、「法律関係と密接な関係がある文書」であつて、民事訴訟法第三一二条第三号後段所定の「法律関係に付作成された」文書に該当する。

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